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2025.09.05

定年後に困らないために〜企業が担う「最後の福利厚生」〜

「60歳で一線を退く」――そんな時代はもう昔の話。
多くの人が65歳まで働き続け、さらに「FIRE」なんて言葉も市民権を得てきました。
でも、いざ会社を離れると「年金の手続き?」「医療保険は?」と、意外に“誰にも教わってないこと”の連続。
実はそこに、定年退職者がつまずく落とし穴が潜んでいるのです。

定年制度の現状:60歳定年がいまだ主流

現在、日本の企業のうち95.3%が定年制度を導入しており、そのほとんど(97.6%)が「一律定年制」を採用しています。
さらに、その中の91.1%が「60歳定年」を定めていることから、単純計算すると100社中83社が60歳を定年としています。

定年後も働く人が多数。背景にある「年金空白期間」

かつては、60歳で定年退職したタイミングで老齢年金の支給が始まり、

「収入ゼロ」の期間が生じることはありませんでした。
しかし現在は年金の支給開始年齢が原則65歳となっており、

それに合わせて企業には「希望者を65歳まで雇用する制度」(再雇用・勤務延長)の導入が義務づけられています。

このため、60歳で定年を迎えた人の86%が再雇用などを通じて働き続けているのが現状です。

65歳を境に、一気に“真の退職”へ

ただし、65歳以降の就業率は25%程度にまで低下します。
これは過去最高の水準ではあるものの、

実に4人に3人はこのタイミングで本格的に労働市場から離脱していることになります。

また近年では、資産運用などで経済的自立を果たし早期退職する「FIRE(Financial Independence, Retire Early)」という考え方も注目されています。

会社を離れると「頼れる人」がいなくなる?

65歳で退職したり、FIREを選んだ方々に共通するのは、

これまで会社が代わりにやってくれていたことを、すべて自分で対応する必要がある」という点です。

そのため、

  • 老齢年金の手続き

  • 失業給付の仕組み

  • 退職後の医療保険の扱い

といった公的制度への理解や手続きは不可欠です。
しかし、多くの企業では退職時にこれらを丁寧に説明する機会は設けられておらず

「辞めた後、誰に聞けばいいのか分からない」という状況に陥る方も少なくありません。

「定年退職者向け説明会」こそ、企業ができる最後の支援

深刻な人手不足が続くなか、定年まで勤め上げてくれた従業員は企業にとって貴重な存在です。
そんな彼らに対して、定年後に必要な制度や手続きの知識を、在職中に伝える機会を設けることは、

企業としての感謝の形であり、最後の福利厚生ともいえるのではないでしょうか。

社会保険労務士としての視点から

私たち社会保険労務士は、年金・雇用・医療・保険といった定年後の制度に精通しています。
企業向けには、定年退職者向け説明会や個別相談の実施といったサポートも可能です。

退職後に「困る人」を減らすためにも、ぜひ定年制度と併せて情報提供の仕組みづくりを考えてみませんか?

 

名古屋支店

特定社会保険労務士 山口征司

 

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