2025.09.08
最低賃金引き上げで「106万円の壁」撤廃へ
――新たに浮上する「20時間の壁」とは?
最低賃金の大幅な引き上げを受け、パート労働者の働き方に影響を与えてきた「106万円の壁」がいよいよ撤廃される見通しです。
来春以降は賃金額にかかわらず、勤務時間と企業規模によって社会保険加入が決まる仕組みに移行します。
しかしその一方で、新たな分岐点として「20時間の壁」が浮上し、働く人々の選択に新しい悩みをもたらしそうです。
全国平均1121円に上昇、過去最大の改定幅
2025年度の最低賃金が、全国加重平均で1121円となることが9月5日に発表されました。
前年度比66円の引き上げで、過去最大の上昇幅となる見通しです。
これに伴い、パート労働者に社会保険料の負担が発生する「106万円の壁」が来春にも撤廃される方向で調整が進められています。
(※各都道府県ごとの具体的な最低賃金額は各種報道をご参照ください。)
「106万円の壁」とは?
現在、パート労働者が社会保険に加入するためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
月収8万8,000円以上(年収換算で約106万円)
週20時間以上勤務
従業員数(社会保険加入者数)51人以上の会社に勤務
この1番目の収入基準が俗に「106万円の壁」と呼ばれてきました。
何が変わるのか
今回の改正では、この収入要件(106万円の壁)が撤廃されます。
背景には、最低賃金の大幅な引き上げがあります。
時給1016円で週20時間働けば年収は約106万円になりますが、来年度からはすべての都道府県で最低賃金が1016円を超える見込みです。
つまり、収入要件は事実上意味をなさなくなるため、廃止される流れとなりました。
その結果、社会保険加入の基準は以下の2点に集約されます。
週20時間以上勤務しているかどうか
勤務先の従業員数(社会保険加入者数)が51人以上かどうか
来春以降は、この条件を満たした場合、収入額に関わらず社会保険に加入することになります。
今後の焦点は「20時間の壁」
今後の社会保険加入要件については、さらに変化が予定されています。
従業員数要件(51人以上)は、2035年までに段階的に引き下げられ撤廃予定
勤務時間要件(週20時間以上)は当面維持
このため、収入の壁に代わり、今後は週の労働時間「20時間の壁」が新たな分岐点となりそうです。
ただし注意点もあります。週の労働時間が20時間未満になると、
今度は雇用保険の加入要件を満たさなくなるため、労働者にとっては悩みどころです・・
働き方を選ぶ上で悩みが尽きない状況が続くでしょう。
(雇用保険の加入要件は、令和10年に週10時間に変わります)
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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