2025.11.05
防げない?退職者による転職サイトへの口コミ投稿
転職サイトの口コミは、いまや求職者にとって大きな判断材料のひとつとなっています。
一方で、企業にとってはネガティブな口コミが掲載されることで採用活動に影響が出るリスクも避けられません。
先日の日経新聞では、退職した元社員による口コミ投稿をめぐる裁判が紹介され、大きな注目を集めました。
どんな裁判だったのか
「パワハラが横行している」「社員に寄り添うと謳いながら実態は真逆」
──ある企業に対するネガティブな口コミの投稿者は、数年前に退職した元社員でした。
会社側は「事実無根」として削除と損害賠償を求めて提訴しましたが、元社員も「投稿内容は真実」として反訴。
双方の主張が真っ向からぶつかる血で血を洗う法廷闘争に発展しました。
転職サイトの口コミが持つ影響力
人材サービス会社の調査によると、転職活動で口コミを参考にする人は回答者の約半数。
そのうち7割が「口コミを見て応募をやめた経験がある」と答えています。
口コミの影響力は無視できず、企業の採用活動に与えるインパクトは極めて大きいといえます。
退職後の投稿は防げるのか
企業にとってリスクとなる退職者による投稿ですが、残念ながら包括的に制限することはできません。
転職サイトの利用は本人のキャリア形成の一環であり、「退職後◯年間は転職サイトを利用してはならない」といった規制は無効とされます。
ただし、在職中に知り得た営業秘密や顧客情報などを開示する行為は守秘義務違反にあたり、限定的には規制可能です。
企業が取り得る対策
企業ができることは、就業規則や誓約書などであらかじめ以下を明確にしておくことです。
守秘義務の徹底
重要ポジションにおける競業避止義務の設定(合理的範囲内)
虚偽や誹謗中傷には損害賠償請求もあり得ることの周知
こうした対応により、リスクを最小化することが可能となります。
裁判の行方
今回の裁判では、会社側の主張が一部認められ、元社員に賠償金の支払いが命じられました。
ただし、代表者の振る舞いに関する別の口コミについては「個人の感想の範囲」と判断され、訴えは退けられました。
最後に
退職者による口コミ投稿は完全に防ぐことはできません。
しかし、守秘義務や誹謗中傷への対応を制度として整えておくことで、企業はリスクを大きく軽減できます。
採用市場において「口コミの影響力」が強まる今こそ、企業は透明性の高い経営と健全な職場環境づくりに努めることが、最大の防御策といえるでしょう。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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