2025.10.20
会社のルール変更、裁判所の答えは?──賃金減額訴訟の判決解説
格安航空会社(LCC)のジェットスター・ジャパン(以下、同社)の客室乗務員らが、
同社に対し「一方的な労働条件変更で賃金を減額されたのは違法」として訴訟を起こしました。
判決は東京地裁で下され、注目を集めています。
具体的な変更内容
同社は2020年に客室乗務員への手当を定額制から勤務日数連動型に変更。
さらに2021年4月には、基本給を時給制から固定給制に切り替え、従来の手当を「固定給に含まれる」として不支給としました。
結果として、仕事量は変わらないのに賃金が減るという状況になり、労働者の同意を得ないまま実施されたことで裁判に発展しました。
労働条件の不利益変更とは
労働条件の不利益変更は、労働契約の内容を変更する行為であり、原則として労働者の同意が必要です。
すべての労働者と個別に締結している契約内容を変える以上、全員の同意が必要とされます。
また、「会社の業績が悪化した」という理由だけでは不十分であり、「不利益変更を行う高度な必要性と合理性」が求められます。
ここが会社側にとってはハードルの高いポイントです。
裁判所の判断
裁判所は、同社が賃金減額の根拠を明確にせず、労働組合の反対にもかかわらず実質的な交渉を行わなかったと指摘しました。
「労働者の意見を十分に聞かずに新賃金体系を導入した」と判断し、
必要性と合理性が欠けるとして変更を無効とし、約1200万円の未払い賃金の支払いを命じました。
個別同意書の重要性
会社側にとって、やむを得ず労働条件を不利益に変更する場合もありますが、
その際には「労働者の自由意思に基づく個別同意」が不可欠です。
説明会や面談で口頭同意を得るだけでは不十分とされており、同意書の取得が推奨されます。
同意書には不利益の内容を明示し、労働者の署名を得ることで客観性を確保することが重要です。
今回の判決から学べること
今回の判決は、「会社側が必要性をきちんと説明し、労働者の意見を丁寧に聞くことが不可欠である」というメッセージでもあります。
ルール変更は避けられない場合もありますが、手続きや説明を省略してしまうと、結果的に大きなコストや信頼の損失につながります。
経営側にとっても、労働者側にとっても、「納得できるプロセス」を踏むことが何よりのリスク回避策といえるでしょう。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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