2025.11.17
ある日突然、労働局からのラブレター
今年9月、厚生労働省からちょっと気になる調査結果が発表されました。
全国の労働局が企業に行った“雇用のルールチェック”のまとめです。
男女の機会均等、パワハラ防止、育児・介護休業、そして正社員と非正規の待遇差――
働く人の環境を守るための法律が、実際の現場でどう運用されているかを見た報告のことです。
調査の通知は、ある日突然やってくる
ある日、会社に一通の封書が届きます。差出人は「都道府県労働局長」。
中身を見てみると、「〇月〇日に調査に伺います。書類を準備し、ヒアリングシートも提出を」とのこと。
――そう、これは“雇用均等関係法令”の実地調査通知です。
この通知には、企業側の拒否権はなく、日程調整のみが認められます。
当日は労働局の“雇用均等指導員”がやってきて、就業規則や人事制度を細かくチェック。
不備が見つかると「ここは改善を」と口頭で指導が入り、放置してしまうと最終的には勧告書。
さらには企業名の公表……なんてことにも。
指導件数の6割が「パート・有期労働法」関係
令和6年度のデータによると、全国で約4万4千件の是正指導が行われ、
そのうち6割超が「パートタイム・有期雇用労働法」関連。
つまり、「正社員と非正規社員の“待遇差”」が今、一番見られているポイントなんです。
チェックされるのは主にこの2点。
正社員と非正規で待遇差があるとき、理由をちゃんと説明できているか?
非正規という理由“だけ”で、差をつけていないか?
調査で特に見られるのは「休暇」と「休職」
私の社会保険労務士としての経験では、調査官が重点的に確認するのは賞与・休暇・休職です。
このうち賞与は企業裁量が大きく、格差があっても是正対象になるケースは少ない傾向です。
しかし、休暇や休職の制度差には厳しい目が向けられます。
たとえば――
正社員には慶弔休暇があるのに、非正規にはない。
正社員は〇カ月休職可能だが、非正規にはその規定がない。
こうした場合、合理的な理由を示せないと是正指導を受けるケースが増えています。
是正率9割以上!行政指導は“ほぼ強制力あり”
実は、是正指導を受けた企業のうち9割以上が改善済み。
つまり、行政の「お願い」ではなく、“実質ほぼ改善命令”レベルの圧力があるわけです。
いったん指導対象になると、「うちはこういう事情で」と説明しても、受け入れられにくいのが現実。
だったら最初から、調査される前に整えておくほうが圧倒的にラクなんです。
調査を敵ではなく「鏡」として
調査の現場では、企業担当者と指導員の間に緊張が走ることもあります。
しかし、指導員も職責を果たしているにすぎません。
むしろ、調査は企業にとって法令順守の歪みを映し出す鏡。
綺麗ごとを言っているようで非常に恐縮ですが、「問題が指摘されてから」ではなく、「指摘される前に」見直す姿勢こそが大切です。
納得できる働き方を、みんなでつくる
正社員も非正規も、働く目的は同じ。
「同じ仕事をしているのに、なんだか扱いが違う」と感じさせない環境づくりこそ、企業の信頼を守る鍵です。
調査が来ても慌てないように、
休暇・休職のルール、今一度チェックしておきましょう。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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