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2025.11.19

「その穴、県のせいです。」—ロードバイク男子の転倒事故から考える“通勤災害”

ある30代の会社員男性が、趣味のロードバイクで走行中に国道の穴にタイヤを取られて転倒。
愛車は大破、自身も半年以上のリハビリが必要な大けがを負いました。
「道路の管理が悪い」として、男性は県を相手に訴訟を起こすことに。
日経新聞でも取り上げられたこのケース、実は“通勤災害”の観点からも考えさせられる出来事なんです。

裁判の結末は?

県側は「安全運転をしていれば防げた」として、男性にも5割の過失があると主張。
しかし裁判所は、道路の穴を放置していた県の責任を重く見て、
最終的に県7割・男性3割の過失割合を認め、201万円の賠償命令を出しました。

ちなみに男性は当初、円満解決を望んでいたそうですが、県の機械的な対応に不信感を抱き訴訟に踏み切ったとのこと。
行政の姿勢が問われる一件でした。

もしこれが“通勤中”の事故だったら――通勤災害のルールをざっくり整理

最近は健康志向や運動不足解消の流れもあって、ロードバイクで通勤する人が増えていますよね。
今回の事故は趣味の走行中に起きたものですが、もし同じことが“通勤途中”に起きていたらどう扱われるのでしょうか。
ここからは、労災保険で扱われる「通勤災害」の基本ルールを簡単に整理してみます。

労災保険では「通勤」とは、

住まいと職場を、合理的な経路と方法で往復すること

と定義されています。

つまり、

  • 普段通る通勤ルートで

  • 自転車や車、電車など一般的な手段を使っていた場合

であれば、通勤中の事故=通勤災害として補償対象になります。

ただし、ちょっと注意が必要です👇

  • トレーニング目的の遠回り

  • 改造バイクや競技用機材など安全性に欠ける車体

こういったケースは「通勤」とは言えず、労災認定が難しくなる可能性があります。

会社としてできること

社員が自転車通勤するなら、会社側も次のような準備をしておくと安心です。

  • 自転車通勤の申請制・経路登録制

  • 安全教育の実施(ヘルメット着用・夜間ライトなど)

  • 自転車保険の加入確認
     → 2025年現在、全国すべての都道府県で義務または努力義務になっています。

  • 通勤経路変更時の再届出ルールを設ける

これらを整えることで、万が一の事故でも対応がスムーズになります。

通勤災害は「目的」と「安全意識」で決まる

ロードバイク通勤は、健康的で環境にもやさしい一方、事故のときに「趣味か通勤か」の線引きが問われます。
「通勤が主目的で、安全に走っていた」ことが大前提。

企業も個人も、ルールづくりと保険のチェックを忘れずに。
楽しいロードバイク通勤を続けるためには、“安全第一”がいちばんの近道です。

 

名古屋支店

特定社会保険労務士 山口征司

 

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