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2025.12.01

気づけばサインしてた?ディーラー保険“おまかせ”時代に終止符

金融庁は、保険会社の代理店が特定の保険会社の商品を積極的に推奨する行為を禁じる新たな指針を、来春にも公表する見通しです。
顧客の意向をより正確に反映した販売体制を整えることが目的で、これまで“顧客本位”が形骸化していた業界の慣習に、いよいよメスが入ります。

「テリトリー制」とは?業界に根付いた“縄張り販売”の実態

保険業界では長年、「テリトリー制」と呼ばれる販売慣行が存在してきました。
これは、自動車ディーラーなどの代理店が、店舗単位で特定の保険会社の商品を優先的に販売する仕組みのことです。
実質的に顧客が他社商品を比較・検討する機会を奪う構造になっており、

さらに保険会社が代理店に対して接待や便宜供与を行うことで、自社の縄張り(テリトリー)を維持してきた実態が問題視されていました。

私の体験談:ディーラーで“保険は当然この会社”の空気

私自身、初めて車を購入したときのこと。

ディーラーの営業担当者が「では保険は〇保ジャパンで進めますね」と、当然のように話を進めてきました。

こちらとしては「いや、他にも選択肢ありますよね?」と言う間もなく、あれよあれよという間に車両保険までしっかりセット。

気づけば、ペンを持ってサインしていました・・・

その後、ファイナンシャルプランナーの資格を取って保険の勉強をし、「よし、今度は自分で選ぼう!」と意気込んでネット損保への切り替えを検討。

ディーラーの担当者にその旨を伝えたところ、露骨に顔が曇り、「えっ……できれば続けてほしいんですけど」と懇願される始末。

最後は、なぜか私のほうが気まずくなって「じゃあ今回だけ継続で…」と折れてしまいました。

今思えば、あの“妙な圧”の正体は、保険の販売実績やインセンティブ。

ディーラーや営業マンにとって、保険会社からの収入がどれほど大きかったか、今ならよく分かります。

若かりし頃の私は、「保険営業の空気感」に飲み込まれていたわけですね。

生命保険業界でも同じ構図が

このような構造は損害保険に限った話ではありません。
生命保険業界でも、特定の保険会社の便宜供与を受けて商品を勧めるケースが問題になっています。
今年8月には、大手代理店「マネードクター」を運営するFPパートナーが、金融庁から業務改善命令を受けました。

顧客よりも保険会社との関係を優先していた実態が明るみに出たことで、

「いったい誰のための保険販売なのか」という疑問が改めて浮き彫りになりました。

「任せきり」は危険、知識を持って判断を

保険はプロの助言が重要である一方、知識ゼロで任せてしまうのはリスクです。
特に自動車保険や生命保険は長期的な支払いを伴うため、最低限の基礎知識を持ち、即決を避ける姿勢が欠かせません。
営業担当者の提案は“参考意見”にとどめ、最終的に選ぶのは自分自身。
「お任せします」と言った瞬間に判断の主導権を手放してしまうことを、ぜひ意識しておきましょう。

そして何より重要なのは、売る側が積極的に勧めてくる商品ほど、一度立ち止まって考えることです。
それが本当に自分に必要なものなのか、他により良い選択肢はないのか。

冷静に比較・検討する姿勢こそが、これからの「顧客本位の時代」に求められる賢い判断といえるでしょう。

 

名古屋支店

特定社会保険労務士 山口征司

 

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