2026.01.14
リスキリングは「休み」が条件?――働く人のリアルな学び方
令和7年10月、雇用保険に「教育訓練休暇給付金」が新設されました。
労働者がスキルアップや資格取得などの“学び直し(リスキリング)”を目的に休暇を取る際、一定額が支給されるというものです。
「会社を辞めずにリスキリングに集中できるように」という、働く人に寄り添った制度……のように見えますが…
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支給要件を見てみると
この給付金、概要をざっくり言うと、次のとおりです。
休暇取得前に5年以上雇用保険に加入していること
無給の休暇を30日以上連続で取得すること
給付日数は加入期間に応じて最大150日
さらに「教育訓練給付金」との併用も可能
一見すると手厚い制度のようですが、実はここに大きな落とし穴があります。
どこの会社がそんな制度を?
この制度を利用するには、勤務先の就業規則に“30日以上の無給休暇(教育訓練休暇)制度”が定められていることが前提です。
……そんな会社、どれくらいあるのでしょうか?
厚労省の調査によると、リスキリング休暇制度を導入している企業は全体の1割未満。
おそらく、その多くは誰もが名前を知るような超大企業なのでしょう。
中小企業では、まさに絵に描いた餅。制度の利用は現実的とは言えません。
要するに、「制度はできたけど、使える人はほとんどいない」構図です。
まさに、“幻の給付金”と呼べる存在です。
本当に会社を休まないと学べないのか
ここで少し冷静に考えたいのは、「学び直し」って、会社を休まないとできないのか?ということです。
もちろん、専門学校に通う、大学に戻るなど本格的な学びには時間が必要です。
でも、最近はオンライン講座や夜間スクールなど、働きながらでも学べる環境が整っています。
それなのに、「学ぶにはまず休め」と言わんばかりの制度設計。
国の“リスキリング推進”という掛け声は立派ですが、現場の働き方の実情とは少しズレているように感じます。
会社がどこまで“学び”を面倒見るべきか
さらに気になるのは、制度導入による企業側の負担です。
会社は就業規則を改正し、新たな休暇制度を設け、申請や管理を行う必要があります。
「うちも導入しないのか」と従業員から突き上げられる企業も出てくるでしょう。
学びを支援する姿勢は立派ですが、企業にとっては新たなプレッシャーでもあります。
リスキリングの本質は“自分の意思”
もちろん、会社が研修や金融教育などを通して学びの機会を提供することは、とても意義のあることです。
従業員に対する啓発活動は組織の役割の一つでもあり、それによって「学びのきっかけ」が生まれるのも確かです。
ただし、本当の意味でのリスキリングは、他人にお膳立てしてもらうことではなく、自分の意思で踏み出すことではないでしょうか。
休暇制度がなくても、少しずつでも学びを続ける人こそ、本当の意味でのリスキラー(学び直し戦士)だと思います。
国の制度や会社の支援に頼るよりも、「自分で学ぶ仕組みを作る力」こそが、最も実践的なリスキルなのかもしれません。
リスキリングは待つより、動くこと
教育訓練休暇給付金――名前は立派です。
けれど、制度がどれだけ整っても、実際に学ぶのは人間です。
“学び直し”を支援する本当の力は、給付金よりも本人の好奇心と継続力。
国の制度を待つより、明日の朝10分でも、まずは新しいことを調べてみる。
――たぶんそれが、いちばん現実的なリスキリングなのかもしれませんね。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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