2026.01.23
職務がなくなったらどうなる?ジョブ型社員の解雇を考える
三菱UFJ銀行が職務限定型のジョブ型雇用労働者を解雇したことをめぐる裁判で、
東京高裁が解雇を有効と判断し、そのまま確定したことが分かりました。
ジョブ型雇用が広がりつつある今、この判決は今後の実務に大きな影響を与えそうです。
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ジョブ型社員とは
ジョブ型社員とは、仕事内容(ジョブ)をあらかじめ明確に定義し、その職務を遂行するために雇われる社員のこと。
日本で主流だったメンバーシップ型(総合職)とは対照的です。
ジョブ型の特徴は次の通り
仕事内容が明確(職務記述書=ジョブディスクリプションが存在)
求められるスキル・責任範囲がはっきりしている
成果・能力で評価される
転勤・異動が基本的にない
専門性が重視される
簡単にいえば、
「この仕事をやってください」がジョブ型、
「会社の一員として幅広く働いてください」がメンバーシップ型というイメージです。
どんな裁判だったのか
舞台は三大メガバンクの三菱UFJ銀行。
円金利情報など日本経済の分析を担う専門職として、年収約3,000万円で11年間勤務していた男性が、
担当業務がグループ企業に移管されることを理由に解雇されました。男性は地位確認(解雇無効)を求めて提訴します。
この事案が注目されたのは、
「企業が事業から撤退した場合に、職務限定型雇用者を解雇できるのか」という問いに、裁判所が正面から答えたからです。
解雇に至るまでの銀行の動きは以下のとおり。
移管先企業に受け入れを打診 → しかし断られる
年収が約2,000万円になる別業務への配置転換を提案
再就職支援金4,600万円を伴う合意解約案を提示
銀行としては、単純に「業務がなくなったので解雇」という判断ではなく、いくつかの選択肢を提示したといえます。
裁判の経過
詳細は専門性が高いため割愛しますが、裁判所は今回の解雇を「経営上の必要性に基づく整理解雇」と位置づけ、
整理解雇の4要素に照らして判断する姿勢を示しました。
整理解雇4要素とは、整理解雇が有効とされるために必要な判断枠組みで、
人員削減の必要性
解雇回避努力の有無
人選の合理性
解雇手続の妥当性
が揃っているかを確認するものです。
判決はどうだったのか
結論は冒頭の通り、銀行側の解雇は有効と判断されました。
そして、この裁判で最も注目されたのは、過去の判例――
「職務限定雇用者に企業は配置転換命令を出せない」とした滋賀県社会福祉協議会事件
――との関係です。
今回の高裁はこの従来の考え方を事実上否定。
従来判例では、職務限定の社員には配置転換を命じられないとされていましたが、高裁は次のように述べています。
「職務限定であっても、解雇すれば労働者の不利益は極めて大きい。したがって、企業は配置転換などの解雇回避努力を行うべきである。」
つまり、
職務限定合意があるからといって、企業が“何もせずに”解雇していいわけではない
というメッセージです。
本件でも銀行は、
他業務への配置転換
- 高額の再就職支援金
といった提案を行っていたことから、裁判所は「解雇回避努力は尽くした」と判断したものと考えられます。
ジョブ型時代に向けた示唆
ジョブ型が広がれば広がるほど、「仕事がなくなったらどうなるのか」という問いは重さを増してきます。
今回の判決は、整理解雇が可能な場面はある一方で、企業には配置転換を含めた解雇回避の努力を怠らない姿勢が求められることを示しました。
そして、整理解雇4要素という絶対的ルールは、ジョブ型であってもなお揺るぎません。
専門性を武器に働く時代にこそ、そのルールの意味が問われていくのかもしれません。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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