2025.12.22
体調不良の従業員が事故を起こしたら、会社は責任を問われるのか?
昨年発生した首都高速での3人死亡事故について、最近その判決内容が日経新聞で紹介されました。
単なる交通事故にとどまらず、「体調不良の従業員が業務中に事故を起こした場合、会社にも責任が及ぶのか」という重要な論点を含んでいます。
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どんな事故だったのか
トラック運送会社に勤める男性は当日、午前3時に起床した時点で38度の発熱、喉の痛み、めまいといった症状を抱えており、風邪薬を服用。
そのまま出勤し、午前4時すぎに大型トラックの運転を開始しました。
運転中にスマホを操作しながら走行していたことも判明しています。
そして午前7時半頃、走行中に意識を喪失し、渋滞中の車列へノーブレーキで突っ込み、
3名が死亡、3名が重軽傷を負う重大事故となりました。
体調不良 × スマホ操作 × 大型車。
複数の危険要素が重なった痛ましい事故でした。
裁判の結果
男性の背景には、事故の数日前に不倫相手から風邪をうつされ、事故前夜も午前1時過ぎまでLINEのやり取りをしていたという状況も判明。
事故の30分前にも、右手ハンドル・左手スマホという状態で運転していたとされます。
事故後も救護活動には参加せず、遺族の心情を逆なでするような行動が続きました。
男性は最大7年の「過失運転致死傷罪」で起訴されましたが、遺族側はより重い「危険運転致死傷罪」への訴因変更を求めました。
しかし本件を同罪に当てはめるのは困難と判断され、追加で別の罪が追起訴された結果、懲役7年6月の実刑判決が言い渡されました。
経営者も書類送検
責任はドライバー個人だけにとどまりませんでした。
勤務先の元社長も、業務上過失致死傷の疑いで書類送検されています。
理由は以下のとおり。
男性の体調不良を把握していたにもかかわらず、乗務前点呼をしなかった
代わりの運転手を用意しなかった
「売上を重視し、事故は起きないと考えていた」という身勝手な判断
過労防止措置を怠り、長時間の乗務をさせていた疑い
企業側のリスク管理の甘さが、重大事故につながった典型例といえます。
忘れてはいけないアルコールチェック
この事件に関連して押さえておきたいのが、検知器を使ったアルコールチェック義務化の流れです。
2023年12月1日から、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いてチェックを行うことが義務化されました。
アルコールチェック義務化とは、対象となる事業所内で安全運転管理者を選任し、
従業員である運転者の酒気帯びの有無を確認することを法令で求めるものです。
対象企業は次のいずれかに該当する企業です。
定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所
その他の自動車を5台以上使用している事業所
詳細は割愛しますが、これを怠り、従業員が飲酒運転で事故を起こした場合、会社側の責任追及は避けられません。
会社の管理体制の不備が問われるのは、体調不良による事故でも、飲酒運転でも同じ構造です。
企業はどこまで従業員の運転リスクを管理すべきか
重大事故が起きてからでは遅く、企業は“人を乗せない判断”を含めた安全管理がますます求められています。
運転業務がある以上、体調管理、乗務前点呼、アルコールチェック、そして代替要員の確保といった対策は、
業界を問わず必須のリスク管理となっています。
最後にもう一つ、年末は忘年会や繁忙期が重なり、事故リスクが一気に上がります。
飲酒運転は当然NGとして、「もう抜けたと思う」は危険です。さらに、寝不足や疲労、体調不良での運転も同じくらい危ない。
この事件が示すのは、事故が起きてからでは遅いということ。
個人の注意だけに任せず、会社として“運転させない判断”を制度として持つことが、最大の再発防止策です。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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