2026.01.09
ハローワークのこれからの役割について考えてみた
先日、ハローワーク職員による不正が、新聞やテレビで相次いで報じられました。
「公的機関で、そんなことが起きるのか」という驚きもありますが、
それ以上に気になったのは、事件そのものがハローワークの仕事の“ど真ん中”――職業紹介の信頼性に関わるものだった点です。
この事件をきっかけに、いまのハローワークはどんな立ち位置にあり、これからどんな役割を担っていくべきなのかを整理してみました。
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どんな事件だったか
東京都のハローワーク墨田で、職業相談担当の職員が偽名を使い、実在しない求職者2人分を登録。
求人を出していた企業に対して、その架空の求職者を「紹介」していました。
さらに問題なのは、その後の行動です。職員は、紹介先の企業に対して自らが求職者になりすまして応募を繰り返していたとされます。
紹介した企業は、判明しているだけで9社。うち4社では実際に面接を受け、内定に至ったケースもあったようです。
厚労省は「職業紹介の信頼性を揺るがす」として職員の処分を検討している、と報じられています。
背景に何があったのか
厚労省が毎月公表している「一般職業紹介状況」には、ハローワークの就職件数が計上されます。
内定したとしても辞退が確認できれば就職件数から除かれますが、
辞退をハローワーク側が把握できなければ、就職件数としてカウントが残り続ける可能性があります。
このニュースを知ったとき、まず浮かんだのはシンプルな感想でした。
「あ、ハローワークにも“数字”があるんだな」と。
職員が架空の求職者を登録し、さらに自分で応募までして実績を作る――やっていることは極めて悪質です。
ただ同時に、その手法は、営業職の世界で起きがちな「自爆営業」(自社商品を自分で買って数字を作る)に似た構造にも見えました。
通常、何のプレッシャーもなくこのような行為に至るとは考えにくい。
だからこそ、就職件数のような指標が、現場に“目標”として落ちてきていたのではないか、と想像してしまいます。
一見するとノルマとは無縁に見えるハローワークの世界にも、数字に関する圧力が存在し得る。
そこに、個人的には強い驚きがありました。
ハローワークの現状と、これからの役割
この事件をきっかけに、改めて考えました。
「いま、ハローワーク経由で就職する人はどのくらいいるのだろうか」と。
少なくとも、私たちのお客さまの現場感で言えば、入社される方の多くは民間の職業紹介事業者(エージェント)経由、
もしくはリクナビ・マイナビに代表される求人・就職サイト経由です。
就職経路として見たとき、ハローワークは“主役”ではなくなりつつあるように見えます。
ただし、ここで「ハローワークの役割が終わった」と結論づけるのは早いとも思います。理由は大きく2つあります。
- 行政機能としての中核は残る
失業給付(雇用保険)の手続きや失業認定は、民間が代替できない行政機能です。
この領域は今後もハローワークの中核であり続けます。
求人のプラットフォーム競争とは別軸で、必ず必要とされる役割です。
- “セーフティネット型支援”の価値が高まる
民間が強い領域は、比較的「採用しやすい層」や「条件が良い求人」に寄りやすい面があります。
一方でハローワークは、失業給付に加えて、職業訓練、相談、就労支援を一体として提供できる“セーフティネット型”の支援を持っています。
ここが、今後の役割のコアになるはずです。
さらに、ハローワークは求人の母数も大きく、オンライン案内でも「年間の新規求人は800万人超」といった規模感が示されています。
求人サイトが主役になっても、ハローワークの「インフラとしての厚み」は簡単には消えないでしょう。
事件が突きつけた問い
今回の不正は許されるものではありません。
ただ、同時に「公共の職業紹介」という仕組みが、どんな指標で評価され、現場にどんな圧力がかかり得るのか――その構造に目を向ける契機にもなりました。
求人探しの主戦場が民間に移っていく中で、ハローワークは何を担うべきなのか。
数字で測りやすい“就職件数”だけを追うのではなく、本来支えるべき人に支援が届いているのか、再就職の質が上がっているのか。
そうした観点で再定義されていく必要があるのかもしれません。
名古屋支店
特定社会保険労務士 山口征司
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