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2026.01.26

360度評価、その理想と“正直しんどい現実”

新しい人事評価制度として広がりつつある「360度評価」。
上司だけでなく、同僚や部下など複数の視点を取り入れることで、公平で客観的な評価ができる――そんな期待を集めてきました。

しかし実際には、その評価結果に納得できない社員との間で深刻な対立を生むケースもあります。
360度評価を背景にした人事異動をきっかけに、解雇の有効性まで争われた裁判がありました。

この事例は、人事評価の難しさと、制度が持つ光と影を考えさせるものです。

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360度評価とは?

通常の人事評価は、上司が部下を評価する一方向の仕組みです。
360度評価はこれに加え、同僚・部下・関係部署など、複数の立場から評価を集める制度を指します。

ざっくり言えば、「一方向ではなく、周囲全体から見る評価」です。

一人の上司の主観に左右されにくく、仕事ぶりや人柄を多面的に把握できるのがメリットとされます。

一方で、評価基準が分かりにくかったり、人間関係が評価に影響したりすることで、不満や不信を生みやすいという課題も指摘されています。

どんな事件だったのか

2022年、都内の金融商品を扱う会社で、コンプライアンス部長を務めていた男性が、

360度評価の結果を理由にFX事業部への異動を告げられました。

本人はこれに強く反発します。

評価が低い理由に納得できず、「仕事を外されてきた」「評価が改ざんされたのではないか」と疑念を抱き、

社長に説明を求めるメールを繰り返し送るようになります。
会議内容を細かく書き起こし、「確認事項」として送りつけるなど、そのやり取りは次第にエスカレートしていきました。

経営者目線で見ると、「気持ちは分からなくはないが、正直しんどい」と感じる場面ではないでしょうか。
会社側はこうした言動を業務の妨げや誹謗中傷と捉え、休職命令を出したうえで最終的に解雇します。

男性は「会社の措置はパワハラであり不当解雇」だとして提訴。

会社側も「一方的な主張や圧力は逆パワハラだ」と反訴し、泥沼の争いに発展しました。

裁判所の判断が示した現実

裁判所は、男性のメールは業務妨害とまでは言えず、懲戒理由も成り立たないとして解雇を無効と判断しました。
一方で、会社側の対応が著しく不当だったとも言えないとして、慰謝料請求は認めませんでした。

つまり、「社員の言動は厄介だが、会社の処分もやりすぎ」という、どちらにも耳の痛い結論です。
最終的には高裁で和解し、解決金を支払って合意退職となりました。

人事評価は、制度より“人”が難しい

この記事を報じた日経によると、パーソルキャリアが運営する「Job総研」の調査では、

20代から50代の約750人のうち75%が「人事評価制度に不満を感じている」と回答しています。

制度別では、最も不満が多かったのが360度評価(77%)でした。

360度評価は、制度としてはよくできています。しかし現実には、

  • 評価に強くこだわる社員

  • 自分の納得を会社に求め続ける社員

  • 制度を「交渉材料」に使い始める社員

が現れた瞬間、経営のコストは一気に跳ね上がります。

制度が悪いというより、「評価に納得できない人が一定数必ず出る」ことを前提に、経営側が腹をくくれるかどうかが問われている気がします。

評価制度を見直すなら

評価制度を見直す際は、経営コンサルタント等の専門家に依頼することも一つの方法です。

ただし、この分野の専門家は本当に玉石混交で、報酬の妥当性も分かりにくいのが悩ましいところです。

だからこそ、流行の制度を取り入れる前に「自社に本当に合っているか」「運用しきれるか」を見極める視点が、何より重要なのだと思います。

そして私自身、社労士ですが、360度評価のような“評価制度そのもの”は正直苦手分野です。

だからこそ今回の件は、制度の是非を語るというより、「実際にこじれると会社はここまで消耗する」という現場の教訓として受け止めています。

 

名古屋支店

特定社会保険労務士 山口征司

 

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