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2026.03.18

医師より強かった「職員の主観」――障害年金をめぐる不正

先日のコラムでは、ハローワーク職員による不正について取り上げました。
「またか」と思った方もいるかもしれませんが、今回は舞台が違います。

今度は、障害年金の支給を担う日本年金機構
しかも、制度の根幹である「支給・不支給の判定」に関わる、不正な運用が明らかになりました。

年金制度は、生活そのものに直結します。その判断が、誰の、どんな基準で左右されていたのか――
今回は、そこを見ていきたいと思います。

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障害年金の審査は、どう行われているのか

障害年金は、市区町村役場、街角の年金センターなどで請求し、

全国からの書類が日本年金機構の障害年金センターに集約されます。

判定は、障害の種類ごとに割り当てられた医師が、原則として単独で行う仕組みです。
判断のベースになるのは、請求者の主治医が作成した診断書です。

私自身も障害年金の請求代行に携わっていますが、この診断書がどれほど重要かは、言うまでもありません。

どの医師が見ても誤解のないよう、主治医とは綿密にコミュニケーションを取り、

請求者の状態が正確に伝わるよう、周辺書類もできる限り丁寧に作成します。

それだけに、今回の件は、正直言って看過できません。

何が起きていたのか――問題の「再判定」

報道によると、医師が行った障害年金の支給・不支給判定について、

職員が「この判定は甘すぎる」「逆に厳しすぎる」と独自に判断した場合、

その判定記録をシュレッダーなどで破棄し、別の医師に再判定を依頼していたというのです。

……それ、誰の主観ですか?
医師の主観を問題視して、職員の主観でやり直す。
この構図に、違和感を覚えるのは私だけではないと思います。

しかも、最初に判定した医師には、再判定が行われた事実すら伝えられていなかったとされます。

障害年金の審査において、医師の判定を否定したり、覆したりする権限は、職員にはありません。

にもかかわらず、こうした運用が長年続いていた可能性がある。
その結果、本来であれば受給できたはずの人が、年金を受け取れなくなっていた可能性も否定できません。

日本年金機構は、こうした取り扱いがあったことを認め、現在「件数を含め事実関係を確認中」としています。

誰のための不正だったのか

以前取り上げたハローワーク職員の不正については、

背景に数値目標や実績プレッシャーがあったのでは、と想像がつきました。

では、今回の件はどうでしょうか。

支給を「不支給」にしたのか、
不支給を「支給」にしたのか。
報道では、どちらが多かったのかは明確にされていません。

ただ、令和6年の障害年金における不支給割合が、令和5年から急増していることを考えると、
「支給→不支給」への再判定が多かったのではないか、という推測は成り立ちます。

形式上は「別の医師に再判定を依頼した」だけ。
しかし実態としては、
“不支給になる判定が出るまでやり直した”と言われても、反論は難しいのではないでしょうか。

その背景に、膨らみ続ける社会保障費への意識があったのか。
そこは、今後の調査を待つしかありません。

疑われる仕組みになった瞬間、制度は機能しない

障害年金は、「働けない」「生活が立ち行かない」そんな人を支える、最後のセーフティネットです。

その判断過程が、こっそり書類を捨て、誰にも知られない再判定で左右されていたとすれば――制度そのものが、信頼を失います。

今回の件は、「不正があったかどうか」共に、
「公的サービスを、私たちは信じていいのか」という問いを突きつけているように思います。

 

名古屋支店

特定社会保険労務士 山口征司

 

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